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岡田 武史 インタビュー 第4回

岡田 武史 インタビュー 第4回 見出し

10年後には日本代表を5人出したい

―岡田さんはオーナーという立場で、さまざまな監督やコーチがFC今治の育成チーム、またはトップチームを見られるということなんですけど、あまり現場には立たれないですか?

「俺は時々見て回ったり、挨拶したり。でも口は出さない。監督に『どうだい、こんなの面白いんじゃない?』って言うけど、俺が選手に言っちゃったら監督の立場ないじゃん。だから基本的にグラウンドに顔出したりはするけど、口は出さない」

―『岡田メソッド』という言葉が他のメディアでも出てましたけど、それはどういうものなのか、どういうふうなことを考えられて進められているのかっていうのをお訊きしたいのですが。

「やっぱりさっき言った共通認識を持たせるようなこと、どういうサッカーをやるんだっていうプレーモデルをまず作って。そのプレーモデルを理屈よりもトレーニングでどうやって落としこむかっていうトレーニングを『岡田メソッド』って呼んでて、プレーモデルをしっかり作らないといけないんだけど、プレーモデルっていうのはある程度僕らのイメージの中でできてきてるし、それをどういうメソッドで落としていくかっていうのは、今いくつかもう出てるんだけど。そういうものをしっかり作って、そこから育成までを全部指導者に徹底していかなきゃいけないから。」

―具体的にはどういうものになるんですか。

「どういうものかっていうと、メソッド自体はテクニックのドリル、それとやっぱり僕らの特徴である、戦術的な共通のイメージを持たせるためのトレーニング。たとえば一般論的な原則で言うと、ボールを持ってる選手がいて、敵がひとり。まず一番近くにいる味方は、どういうことをするべきだと。その次のエリアにいる選手はどういう動きをする、一番遠い、逆サイドにいる選手は何を考えるべきだというような原則的なものと、もっと具体的な、我々が今こういうサッカーをやるっていうことを言って、そこから逆算してるんだよね。何かって言ったら、日本は点が取れない、普通後ろからビルドアップして、こうやって突破してって、そこで終わるんだよ。でもキーパーと1対1になっても入らないんだよ。それでストライカーがいないって何十年も言ってきてるわけよ。この前のアジアカップでも、フリーでヘディングして入らないんだよ。な?」

―そうですね。

「それでストライカーがいないって、何回も言ってきた。じゃあどうやって点取るのって、極端な話キーパーと2対1、3対1作ればいいんだよ。そのためにはどうするんだっていうところから逆算してって、ここから先は秘密になるからあんまり言えないけど、俺がニアゾーンって言ってるこのエリアをどうやって取るかっていうようなこと。サイドから何気なくボーンとクロスを放り込んでもなかなか点にはならないから」

―なるほど。今、それを指導者の方々に。

「共有するか、まずは今スペインとも契約してるから、個人と。みんないろんな意見があるんで、そこのすり合わせをしてる段階。だから俺が『こうなんだよね』って言ったら、『そうです、その通りです』って言うやつはいらないって言ってるんだよ。そうじゃない、俺とは考え方が違うやつを集めたつもりだと」

異なるアイデアをぶつけ合い、個人の限界を突き破る

岡田 武史 インタビューNo.4

―プレーモデルはこうすべきだ、この年次のやつにはこういうメソッドで教えるべきだと。

「そしたら俺のものしかできないじゃん。俺なんて限界あるって思ってるから、自分で。だからお互い、その限界を超えようよという話だから。もっとみんなで持ち寄って、よりいいものを作ろうという発想だから」

―スペインサッカーの知見も。

「そうそう。入れようよという」

―それをプレーモデルとメソッドで型にしていくと。

「そうそう」

―それはもう喧々諤々議論し、FC今治の選手に実際そのトレーニングメソッドを使ってもらって。

「正直言うと、俺がこれやろうと言って昨年の9月から走りながら考えていて、この短期間にここまでなんとかこぎつけたんだけど」

―他のいろんなことがあって。

「走り回ってて。だからまだ完成してるなんていうレベルじゃなくて。でもどういう方向で行こうっていう糸口とか簡単なものはできてきて、さっき言ったように共通認識を持てるメソッドをしっかり作って、そこから指導者に徹底していくっていう。そこの効果をきっちり検証して、また計画立ててメソッドに反映してっていうPDCAサイクルに持っていきたいと思ってる」

―それがFC今治の育成になると。

「そうそう。それをSAPにビッグデータとして取ってもらえそうなんで。そうしたら、このトレーニングを何回やったこの選手はどうなったっていう評価項目を作って、それをビッグデータに入れておく。1年じゃわからないかもしれない、2年3年した時、このトレーニングメソッドの効果がこういう評価だとか、そういうことができるようになるんだよ。そういうPDCAサイクルを作りたいんだよ、SAPと組んで」

―SAPっていうのはドイツの会社で、ドイツはまさにスペインとはまたおそらく違う形で、ある種自分たちのサッカーの型を作って。

「そう。実はSAPのオーナーがホッフェンハイムっていうチームのオーナーなんだけど、8部の時に資金援助し始めて、そして自分たちのデータ蓄積ノウハウを使って育成管理をして、今1部でずっといると。3月にホッフェンハイムに行ってくるんだけど、そういうのを見て来ようと思って。オーナーが会ってくれるっていうから会って。正式にスポーツに進出しだしたのも最近だから。ドイツ代表やったのがこのブラジルワールドカップで、今もうSAPにいろんな国が殺到してるんだけど」

―でもさすがに岡田さんがオーナーになったからって、すぐに結果が出るわけじゃないですもんね。

「育成での結果っていうのは、やっぱり誰がやろうと時間がかかるよね。育成で勝ったってしょうがないわけで。ただ、トップはそんなこと言ってられないよ。やっぱりまわりが許してくれないから、トップは結果を出していかなきゃいけないと思ってるよ」

―そこはそこで目標というか。

「今年JFLに上がってもらおうと思ってるし、十分可能だと思ってる。去年は四国リーグで3位だったけど、まず四国リーグで優勝して、全国社会人地域大会、決勝大会勝ち残って、2位までに入ればJFLに行けるんだよ」

日本サッカーのために一人ひとりがやれることがもっとある

―その先に考えられてることはありますか?

「中期計画を全部10年後まで立ててあるから。だいたい2年刻みぐらいで、10年後にはJ1優勝争い、ACL優勝を狙えるチームということで、その時には下から育成できればね、十分勝てると思ってるから」

―自分たちで強く育成して、そのチームで優勝して。10年後っていうことは2025年ぐらい、2026年のワールドカップとかはFC今治が席巻してる、みたいな感じですかね。

「そうそうそう。5人ぐらい代表選手が出て、日本のサッカーが変わってくると。だって世界中そうじゃん、スペインだってバルセロナから5人ぐらい選ばれるようになって変わったし、ドイツはバイエルンだし、オランダはやっぱりアヤックス出身者だし。これも民主主義と一緒で、政府がなんもしてくれない。民主主義っていうのは、ひとりひとりが責任を分担するっていうことだったはずなんだよね。日本のサッカーがどうのこうので協会が悪いとか権利ばっかり主張するけど、ひとりひとりがやれることがあるわけよ。だって俺がこのチーム強くして、10年後に5人代表出たら変わるんだから、日本の代表。やっぱりひとりひとりが責任分担していくべきだと思うし。そんなの無理だって言うかもしれないけど、その可能性の道はあるわけだから」

―それはある種、ちゃんと自治できる範囲のFC今治っていうものを今ここからちゃんと作り上げていって、最終的に日本全体が。

「そう。まあ、ホラは大きいほうがいいっていうから(笑)」

―(笑)ワールドカップも優勝すると。

「ワールドカップの優勝まではわかんないなあ」

―(笑)今、岡田さんおいくつですか?

「58」

―58ってことは。

「68だよ。もう死んでるかもしれない」

―いやいやいや(笑)。生きててくださいよ。岡田さんのチャレンジっていうのは、おそらく岡田さんの同世代にとっても刺激ですよね。今定年退職してどうしようとか、団塊世代っていう方たちもいらっしゃいますし。

「俺はそういう社会で生きてこなかったから、自分でそういう実感がまったくないんだよね。定年だとかそういう社会とか、いつも定年だからそういう感覚がまったくないけど(笑)。でもほんとに最初にも言ったように、この歳でこうやってチャレンジしてワクワクさせてもらえる。もういつ死んだってしょうがないと思ってるから、10年間ともかくやり通してみようかなあと思ってるよね」

岡田武史プロファイル写真

岡田 武史

大阪府立天王寺高等学校、早稲田大学でサッカー部に所属。同大学卒業後、古河電気工業に入社しサッカー日本代表に選出。 引退後は、クラブサッカーチームコーチを務め、1997年に日本代表監督となり史上初のW杯本選出場を実現。その後、Jリーグでのチーム監督を経て、2007年から再び日 本代表監督を務め、10年のW杯南アフリカ大会でチームをベスト16に導く。中国サッカー・スーパーリーグ、杭州緑城の監督を経て、14年11月四国リーグFC今治のオーナーに就任。日本サッカー界の「育成改革」、そして「地方創生」に情熱を注いでいる。

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