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岡田 武史 インタビュー 第5回
新しい化学反応を生み出していける場に
―今治市民の方の反応が変わってきたっておっしゃってましたけど、選手はもちろん直に影響を受けてるわけですよね。
「選手も今までと違う緊張感持ってやってるんじゃない? だって今までセレクションやったら10人とかだったのに、50人ぐらい来て。筑波大学のキャプテンなんかがうちに来たから」
―全国からわざわざ『岡田メソッド』をやりたいと。
「岡田メソッドというわけではないだろうけど。バイトしながらでないとできないわけよ、うちは。給料マックスでも10万ぐらいしか払ってない、5万とか10万だから。親が頑張って筑波大学出したんだぜ。ちゃんと就職してくれよと思うだろ、普通(笑)」
―(笑)既存の仕組みに閉塞感を感じる中で、そこに新しいリスクを取って、もっとワクワクできるようなことをクラブがやろうとしてるわけで。それにある種、アンテナがピンと来たということなんですよね。
「でも、人のことだと心配になる(笑)。おまえいいのかって、J3通ってるっていうのにうちに来るっていうから。でもそういうのとか、東京のスポンサーさんにトータル1億何千万の投資するとか言われるとだんだん結構プレッシャーを感じてきて(笑)、こいつらのためにも絶対成功させなきゃいけないなっていうのは」
―今治市民も、選手も、指導者も、スポンサーも、いろんな人たちがそのビジョンに。
「バカだな、みんな俺のホラにだまされちゃって」
―(笑)みんな何か新しいこの国の突破口だったりとか、サッカーをもっと変えていきたいっていうのもありますし、求めてますよね。
「社会自体、資本主義自体にみんな感じてるんじゃない? ピケティがあんなこと言ってるけど、富裕層から税金をたくさん取ったら平等になるけど、みんな働くのがバカらしいってなってきて、それがおかしいから資本主義が出てきて、要するに明快な答えをみんな見出だせてないわけよ。だからそういう中でこれだけは明確に、新しいものが生まれるんじゃないかっていう希望を持ってるんじゃないの?」
クラブもマインドも常にオープンに
―岡田さんと触れ合ってる人はそのエネルギーもらってるでしょうけど、この記者会見でようやく知ったりとか、「岡田さん、地方のどっかのクラブの、今治だっけ、どこだっけ、オーナーになったらしいけど何考えてんだろう」っていう人たちがこの話聞くと、びっくりするでしょうね。それを知ることによって僕もプロジェクトに参加したいなとか、そういう人もこれからどんどん出てくるんでしょうね。
「そういう人たちがいろんな形で参加できるような、オープンなクラブにしたいわけ。ネットでの参加だったりボランティアでの参加だったり、いろんな人がここに参加できる。お金持ちでお金だけ出すでもそれはいいんだけど、アイディアだったり労力だったり、いろんなことでみんなで作り上げていくようなものにしたいんだよね。絶対閉鎖的になるなと、自分たちで抱えるなと、俺はフロントにうるさく言ってるわけよ。このプロジェクトは俺らだけでは絶対成功しない。いろんな人の力を結集しなきゃいけない、そのためには常に開いてなきゃいけないと思ってるんだよ、俺は」
―そういう意味でのグローバル発想っていう感じがしますね。
「そうやって外部の力を借りるといろいろな人がいるからリスクもあるしマイナスも出るんだよ。ああ、損した、だまされたっていうことも出ると思うよ。いいんだよ。トータルでどうなるかだから」
―プレーでも指導でもビジネスという形でも、ただのお手伝いでも参加したい、FC今治と一緒に何かやりたいっていう人もいると思うんですけど、まずはどうしたらいいんですかね
「たとえば直接連絡くれてもいいし、今後『岡田サロン』っていうネットのコミュニティーを作るんで、そういうとこでもいいし、実際に来てくれても全然問題ないし。今度、種類株っていうのを発行するから株主になってもらってもいいし、なんでも受け入れるよ、うちは」
―このサイトから発信される情報をちゃんとチェックしてもらって。いろんな化学反応はウェルカムだと。
「ウェルカムですよ。さっきも言ったけど、来た者同士が新しい化学反応起こしていくようなこと、新しいビジネスを作っていくようなこと、そういう場になっていけばいいと思ってるから。ゆくゆくは、必ずうちにもメリットのあることになってくると思ってるから」
7分間試合に出たら足がガクガクに
―改めてすごいワクワクしました。こないだ試合に出られてましたけど、体を普段から鍛えていらっしゃるんですか?
「オーナーになってから鍛えられないんだけど、それまでは週に3回ぐらい走ったり、トレーニングしてたんだけど、オーナーになってからはほんと走れなくて。久しぶりに今治来て2日連続走ったらガクガクになっちゃって(笑)、マッサージ呼んでほぐしてもらって。だからあれも、7分ぐらいしかできなかった。7分しかやってないんだよ。2日後、普通に歩けなくなった。がに股になって足がパンパンで。やっぱりね、ジョギングとかと全然違うのよ、サッカーのガッガッて止まったりするの。もうかみさんと一緒に歩いて、こうやって。情けない(笑)」
―(笑)新聞なんかでも岡田さんがチャージしたりする場面とか、テレビでも他のスター選手いっぱい来ているのに、岡田さんのシーンが一番長く報道されて(笑)。
「違う違う、あれは俺とカズっていう物語を作ってるから。カズに『おまえどれぐらい出る?』『僕、後半です』『じゃあ俺後半から出るから、俺がおまえをマンツーマンでマークしてタックルするからな』って言ったら、あいつが逆に来やがって(笑)」
―そうだったんですか(笑)。じゃあ結構、そこはお互いに盛り上げようということで。
「そうそうそう(笑)」
―エンターテイナーですね(笑)。日本サッカー界における名シーンですからね。ありがとうございました。
岡田 武史
大阪府立天王寺高等学校、早稲田大学でサッカー部に所属。同大学卒業後、古河電気工業に入社しサッカー日本代表に選出。 引退後は、クラブサッカーチームコーチを務め、1997年に日本代表監督となり史上初のW杯本選出場を実現。その後、Jリーグでのチーム監督を経て、2007年から再び日 本代表監督を務め、10年のW杯南アフリカ大会でチームをベスト16に導く。中国サッカー・スーパーリーグ、杭州緑城の監督を経て、14年11月四国リーグFC今治のオーナーに就任。日本サッカー界の「育成改革」、そして「地方創生」に情熱を注いでいる。